私を本気にさせないで
気付けばいつも彼女のことを目で追っている自分に気付いた。

かと言って彼女はきっと俺のこと、ただの後輩にしか思っていない。
接する態度は同じで、分からないことを質問すれば丁寧に説明してくれるけれど、それは先輩としてだった。

それが堪らなく寂しい気持ちにさせたけれど、今の俺はまだまだ半人前で、仕事面でも人間性をとっても、彼女につり合う男じゃないと認識していたから、ひたすら向上心を持って仕事に打ち込んだ。

いつか彼女とつり合える男になったら自分の気持ちを伝えよう。
そう思っていたんだけど……。聞いてしまったんだ。
社内で彼女の噂話を――……。


「なぁ、白田さんって彼氏いると思うか?」

先輩に頼まれて総務部に書類を届けに行った帰りだった。
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