私を本気にさせないで
「えって……まさかずっとエレベーターから降りないつもりですか?」

そんな姿を見せられてしまったら、ドアを押さえながら、つい意地悪心に火が点いてしまった。

だって普通に考えて嬉しいじゃん?
もう本気の恋愛をするつもりがない彼女が、さっきの俺とのキスでこんなにも顔を真っ赤にさせ、動揺してくれているのだから。

「それともさっきの続き、して欲しいんですか?」

もっと困った彼女の顔が見たい。
そんな一心だった。

すると彼女は予想以上に顔を真っ赤にさせ、吐き捨てるように「バッ、バッカじゃないの!?」と言うと、エレベーターから飛び降りていった。

年上でいつもどこか余裕がある姿からは、想像もできない幼い言動に笑みが零れてしまう。

「またね」

気付いたら去っていく彼女にそんな言葉を投げ掛けている自分がいた。
< 24 / 125 >

この作品をシェア

pagetop