私を本気にさせないで
ただ単に、彼女の中で俺という存在の味方が少しでも変わればいいと思っていた。
男として認識してくれればいい、と――……。

だけどだめ、だな。

あんな可愛い一面を見せられてしまったら、なにがなんでも手に入れたくなる。
あの彼女を誰にも見せたくないって独占欲が芽生えてきてしまう。

一度芽生えてしまった気持ちを消すことなんて、容易ではない。
いや、もしかしたらもう二度とこの気持ちを消すことなんて、無理なのかもしれない。だから――……。



「おはようございます、白田先輩」

「……っ!」

次の日の朝、会社の最寄り駅で彼女を待ち伏せした。

きっと彼女のことだ。
もしかしたら昨日のことがあった手前、俺は避けられてしまうかもしれない。
そんな不安があったから。
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