私を本気にさせないで
だけどどうやらその不安は見事に的中していたようだ。
俺の姿を見るなり、あからさまに動揺し、忙しないほど目は泳いでいる。

沢山の人が行き交う改札口前。
人の波の音で溢れ返っている中、戸惑う彼女にゆっくりと近づいていく。

案の定彼女は驚き、手にしていたバッグをギュッと握りしめる。
もしかしたら今の現状に耐えられなくて、逃げ出したいとさえ思っているのかもしれない。

だけど、ごめん――。

悪いけど逃がしてなんかやらない。
なにがなんでも手に入れさせてもらうから。

いまだに逃げ出してしまいそうな彼女の腕を掴むと、身体をびくつかせ焦ったように俺を見上げてきた。
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