私を本気にさせないで
そして聞きたい。……彼女の今の気持ちを――……。

そう思うとクリスマスイブが待ち遠しくて仕方なかった。




「あっ、大森!」

次の日の朝。
いつものように最寄り駅で降りて改札口を抜けた時、背後から聞こえてきたのは俺を呼ぶ声。
その声に足を止め振り返れば、同期で営業部に配属された大竹が駆け寄ってきた。

「おはよ」

「おはよ。久し振りだな、一緒になるの」

「かもな」

と言ってもきっといつも同じ電車に違いない。
それでもここ最近会わなかったのは、この人の多さだ。
オフィス街にある我が社。
おかげで最寄り駅で降りる人の数は多く、その中でお互いを見つけるのは至難の業だと思う。

隣に並び、人の波に逆らうことなく会社に向かって足を進めていく。


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