放課後コイ綴り
……一条くんはペンネーム、どんなものにするんだろう。
ちょっと……ううん、すごく気になる。
部員同士だったら知ることができても、普通は関係のない人には自然と秘密にするものだから。
こうやって堂々と知ることが許された立場って贅沢だなぁ。
そんなふうに考えていると、はたと気づく。
思えば、わたしは彩先輩のペンネームを知らない。
「そういえば、彩先輩のペンネームってなんですか?」
首を傾げ、尋ねる。
「あたしは『ひいな』だよ」
「ひいな、ですか」
「苗字が日生だから、雛鳥の雛ってことで!」
聞くところによると、雛と書いてひいなと読めるらしい。
彩先輩は性格のわりに物知りだ。
うーん、でもあまりわたしの場合は参考にならない。
どうしよう……。
「よーし、わかった!
あたしがふたりのペンネを決めてあげよう!」
「遠慮しておきます」
「ちょ、一条!
こんな時だけ返事するとかやめろー!」
すぱんっとある意味小気味いいくらいの勢いで彩先輩の申し出を断ったのは、ずっと黙っていた一条くん。
真剣に考えていて聞いていないのかなって思ってたけど、ばっちり聞いていたんだねぇ。