放課後コイ綴り
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わたしたちは、先輩たちの想いを、未来を、願いを託された。
それなのに今、わたしたちはふたりきり。
文芸部を繋げることは、できない。
それなのに、わたしは────
「相原?」
隣の一条くんが、わたしの名を呼ぶ。
覗きこむように彼の顔が下からわたしを見上げる。
さらりと綺麗な髪が流れた。
「部室、一緒に行く?」
お誘いの言葉に、反射のように胸に熱が灯り、きゅうと音を立てる。
こくこくと首を縦に振れば、彼はん、と満足げな声を出した。
わたしの手の中から本を攫って、先を行く彼の背を追う。
わたしたちの大切な文芸部にもう未来はないというのに、わたしはとても幸せなんだ。
一条くんとふたり取り残されたこの狭い世界が、わたしに喜びを感じさせて、切ないときめきを与える。
「……ごめんなさい」
わたしはどうしたらいいか、わからない。