放課後コイ綴り
廊下から上履きの擦れる音や、言葉を交わす下級生たちの声がする。
校舎の4階の片隅。
部室は今日も暖房が効くのが遅い。
わたしは首元に巻いたままのマフラーに顔を埋めて、いつもの席についていた。
いつでも少しほこりっぽい部室は1週間以上掃除をしていないせいで、より汚れてしまったかのように感じる。
また箒で掃いておかなきゃ。
スカートの上から太ももや膝をさすっても、なお寒い。
室内なのに白い息がふわりと踊ると、がらりと扉が開く。
わたしには少し重たいそれを軽々と開けたのは、わずかに息を切らした一条くん。
「ごめん、待たせた?」
そう言って、一条くんは悪いな、と謝ってくる。
わたしは慌てて首を横にぶんぶんと振った。
「そんなことないよ!
わたしも今着いたところだし」
「そう?」
そんなやりとりをしていると、中に入って来た一条くんを見ながら、思わずふっと息をもらすように笑う。
どうした? と荷物を置きながら彼がわたしに視線をやる。
わたしはふにゃりとだらしなく、あのねと一条に笑みを向けた。
「デートみたいだなって」