放課後コイ綴り
こくりと頷いて、わたしもマフラーを外す。
気づけば部室は暖房が効きすぎていたのかな、あつくて仕方がない。
空気を変えるように、かくかくとした動きで棚に仕舞っておいた部誌を出す。
騒がしい自分の心臓を感じつつ、優しいピンクの表紙を掌で撫でた。
────最後の部誌だ。
印刷ミスが出たときのために余分に印刷した分。
今回はミスがなかったから、それも部誌の形に綴じてある。
部室に保管用の1冊、配布時の試し読み用の1冊、あとは自分たちが持ち帰る分を引いた計80冊。
それらをみんなケースに入れたものを一条くんが持ち上げる。
いつも、そう。
冊数がそれなりなだけあって重さもなかなかなのに、彼はいつもひとりで持ってくれる。
わたしが運ぶのは試し読みの1冊だけ。
甘やかされているなと、思う。
「一条くん、あの、ありがとう」
「ん」
両手の塞がった一条くんのために、ぐっと力を入れて扉を開ける。
ひやりとした空気を全身に浴びつつ、わたしは廊下に足を踏み出して、部室の外へと出た。