放課後コイ綴り
時間はちょうど昼休みで、お弁当や財布を手にした下級生たちの間をすり抜ける。
今週の午後はさっさと帰らされていたから、少し久しぶり。
ちょうど3年生の試験期間だったんだよね。
でも、本来ならわたしたち3年生は2学期末で定期テストは終わり。
そこまでのテストで欠点を抱えたままとなってしまった人は、学年末も受けなくちゃいけないの。
1・2年生は普段どおりの授業なんだけど、わたしと一条くんは学年末は受けないから学校に残っていてはいけなくて。
試験最終日にようやく顔を合わせることができた。
そっと彼を盗み見る。
全体的に薄めの身体をしているのに喉仏だけがぽこりと浮きあがっていて、それがなんとも男らしく色っぽい。
一条くんをこんな風に見つめることができるのは、あと何回あるのかな。
そんなふうに考えて惜しむように、ねだるように、わたしは彼に視線をやってしまう。
そして気づけば目の前は目的地、図書準備室。
「ご苦労さま」
そう言って笑うのは、わたしたち文芸部の顧問をしてくれている木下先生。
優しくて可愛くて、話しやすいとてもいい先生。
授業もわかりやすいから生徒に人気なんだ。
今日はそんな木下先生に配布用の部誌を預けに来た。
わたしたちは卒業を控えているから残りの細かい作業はお任せなんだよね。