放課後コイ綴り
部屋の隅にあるテーブルの隙間にケースを置かせてもらう。
「文芸部の最後の部誌ね……」
木下先生が部誌を手に取る。
ぱらぱらとページをめくりながら、口にした〝最後〟という言葉に胸がずきりと重く痛んだ。
「さみしくなるわね」
そうだ。
木下先生がいくら若くても、ずっと文芸部の顧問をしてくれていたことには変わりない。
だから、来年からは他の部活の顧問になることに、先生もきっと思うことがある。
ああ、失っていくばかり。
もう一条くんの文章を読むこともできなくなる。
わたしには過去しか、思い出しか、残されない。
さみしい、辛い。
……どうしたらいいか、わからない。
「……」
わたしたちが沈んだ表情で言葉をなくしたせい。
ごめんなさいねと木下先生から謝罪を入れられた。
「じゃあ預かっておくわ」
優しく笑った先生にふたりで頭を下げる。
唇に歯が食いこむ。
「……よろしくお願いします」
そうして、目一杯綴ったわたしたちの物語が、ふたりの手から離れていった。