放課後コイ綴り
彩先輩との約束は守れなかった。
わたしたちは大切だった文芸部を、繋がりを失う。
それでも、その最後の瞬間を共に迎えたのが他でもない君だった。
そのことだけは嬉しく思うよ。
そんな愛おしい時間で、文芸部のあみとして綴ってきたたくさんの物語。
部誌やリレー小説にこめて、隠していた〝すき〟だけで満足していた。
だけど、違う。
もう言うことはないなんて、そんなのありえない。
「一条くん」
彼の名を口にする。
1度伏せられた瞳にまたわたしの姿が映る。
そっと深呼吸をした。
好き。
たったの2文字。
簡単に口に出せるはずのそれを、唇に乗せようとするも、
「……っ」
できない。
今しかない。
今を逃せば、2度と一条くんにこの想いを伝えることはできないのに。
それなのに、とてもこわい。