放課後コイ綴り
告げなければ叶うことはないけど、ふられることも、この心地いい関係が崩れることもない。
それなりに好みの文章を書く、同じ部活だった人。
それで十分。
十分だと、思わなくちゃ。
だってそれ以上のものを望むなんて、贅沢すぎるから。
「相原?」
あいはら。
彼が簡単にわたしを呼ぶ。
わたしの、告げたくて、口に出したくない想いよりも長い文字数。
「うん」
呼ばれただけなのに、泣いてしまいそうになった。
「……ごめんね、なんでもないよ」
ずるくて、弱くて、ごめんね。
えへへと笑ってなにもなかったふりをする。
掃除なんかのしなくてはいけないことを簡単に済ませた。
そして卒業の時にする文芸部の伝統。
うしろの黒板にわたしたちがいた証を残す。
一条くんが先を譲ってくれたから、1本ずつしかない白と赤のチョークのうち、白い方を手にする。
悩んだ末にこつこつと、ゆっくりと言葉を乗せていく。
白い粉が落ちた。
続けて一条くんもわたしの下に刻む。