放課後コイ綴り
あの日からあっという間に日々は流れて、卒業式が終わった。
周りのすすり泣く声を聞きながらもわたしは卒業するという実感を持てず、終始ぼんやりとしていて。
胸元につけられた花だけが鮮やかで、目に焼きついた式だった。
最後の部活の日以来、一条くんとは一言も言葉を交わすことなく高校生活が終わった。
あまりの呆気なさに肩の力が抜ける。
現実なんて、こんなもの。
チャリ、と揺れる音。
わたしが手にしているのは部室の鍵。
木下先生に最後に覗きたいと頼んだら貸してくれたんだ。
薄汚れた扉を前にして、鍵穴に差しこむ。
右に回し、ガチャリと音がしたのを確認して戻す。
そして鍵を抜いたら、重たい扉に体重をかけて開けた。
綺麗に整頓された部室に足を踏み入れて、1番奥。
うしろの黒板を見た瞬間、わたしは目を見開いた。
わたしと一条くんの文章の頭文字に赤いチョークで丸がつけてある。
そして浮かびあがる文字。