放課後コイ綴り
ぺたりとその場に座りこむ。
ひやりと冷たい床を感じる。
まばたきの振動のせいか自然と、それでいて突然に。
こらえる間もなく涙がこぼれ落ちた。
「ふ、ぅ……っ……」
部誌をかき抱けば、頬を伝う雫が表紙に染みこんでいく。
一条くん、ずるいよ。
こんなものを残していくなんて、ずるい。
わたしが気づかずに卒業する可能性を知っていたはず。
ううん、むしろそのつもりで残したんでしょう。
でも、わたしは知ってしまった。
君の気持ちを。
新入部員が来ないかドキドキして、だけど来なくて落ちこんだ春も。
クーラーがないせいであつくて仕方がないのに、欠かさず部室に足を運んだ夏も。
開けた窓から舞いこんで来た葉でしおりを作った秋も。
同じ部室にいるだけで切なくて、寒いのに幸せだった冬も。
一条くんと一緒にいた。
いられただけで、嬉しかった。
その時間を、一条くんも同じ想いで大切にしていたんだって思ってもいい……?