放課後コイ綴り




一条くん以外の高校の同級生と会うことがあっても、彼は孤立しているわけではないけど他人をあまり近寄らせない人だったから、噂もほとんど聞かない。

今でも親しくしている高校の友人はいないみたい。



唯一の情報源は彩先輩。



作風は違えど、作家という繋がり。

それに一条くんも彩先輩とは高校卒業後もたまに連絡を取っていたそうで、今では彼のことを知りたかったら彩先輩に尋ねるしかない。

それでも多くを語らない一条くんだから、あまりくわしい現状はわからないんだけど。



今の一条くんはどんな姿で、どんな言葉を唇からこぼすのかな。



あの頃の一条くんはクールで、いつも静かで、わたしには優しくて。

かっこよかった。素敵だった。

大好きだった。



……ううん、今でも、わたしは。



「ふみは一条に会いたい?」

「……会いたいです」



そんなの当然だよ。

昔のままでも、変わっていても、どちらでも構わない。

そんな些細なことどうだっていい。



ただ、一条くんに会いたい。

あの時のまま、どんな人に出会っても変わらなかった想いを告げたい。



だってわたしは26になっても、一条くんのことが────好きなんだ。






< 62 / 85 >

この作品をシェア

pagetop