放課後コイ綴り
先頭でお待ちのお客さまに手をあげて、奥のレジへどうぞ、とわたしの目の前へと誘導する。
にこにこと微笑んですっかり慣れた言葉を口にする。
「お品物お預かりいたします」
そう言って、お客さまから両手で本を受け取った。
久しぶりに彩先輩と会ってから、もう2日。
楽しかった時間はあっという間に過ぎてしまい、お金を稼ぎ生きるために今日もわたしは働いている。
とはいえ、その仕事も自分の好きな職業だし、苦ではない。
昔から好きだった本に囲まれた生活は、大変だけど充実している。
真新しい本の香りがする入荷日の朝には気分がいつも以上にあがるし、サイン会や特集といった企画を考えるのも面白い。
こうして今みたいにレジに入るだけでも、自然と嬉しいなと思うんだ。
6冊ほど積まれていた本を順にバーコードを通していると、1番下から見覚えのある表紙がのぞいた。
それは今年、念願叶って文庫担当になったわたしが、昨日補充した文庫だった。