放課後コイ綴り




重い木の扉を、全体重をかけるようにして開ける。

きいきいと古びた音がする中、そっと足を部屋へと踏み入れた。



少し埃っぽい空気は暖房器具がないせいで冷え切っている。

革張りの表紙が並んだ棚に窓からかすかに光が射して、影がゆらゆらと揺れた。



濃密でありながら、張りつめた清廉さのある空間を、わたしはそっと泳ぐように進む。



ここは別棟にある図書館。

本館にある小さな図書室とは違い、古い本しかなくて新書が全く置いていない。

それにどこもかしこもほの暗いし、なにより移動するのが面倒だと利用者は少ない。



図書委員の仕事もなく、司書教諭の先生しか訪れないけど、今は誰もいないみたい。



わたしはここの雰囲気が好きでよく利用するんだ。

原稿の資料探しにはぴったり。



本を視線でなぞるようにして物色する。

なんの気なしに棚の角を曲がると、そこには立ったまま本を読む一条くんがいた。



ただ立っているだけのなんてことない仕草だけでもかっこよくて、わたしは思わず見惚れる。







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