放課後コイ綴り
1度は閉じた本のページをぱらりぱらりとめくる。
軽く流し読みをして、ぼんやりとしていた時。
あとがきのその先に解説があることに気がついた。
「……え?」
解説を書いていたのは、なんてことない日常を描いていながら読者にセンチメンタルな気分を味わわせる著者。
学生には共感できると、大人には昔を思い出すと評判がいい作品を書いている。
〝奏〟
それは、わたしが一条くんではないかとこっそり思っていた人の名前だった。
何度もまばたきをして、必死で目の前の文字を見る。
そしてゆっくりと理解していく。
繋がりなんてないと思っていた、ふたりの作家。
だけどここに、糸はあったんた。
解説、そして著者。
印刷されたその文字を指先でなぞる。
文芸部時代に自分たちで印刷した部誌とは違う、美しい形。
にじむことのない文字。
だけどなんだか、ゆらゆらと、揺れているのはどうしてなのかな。
まぶたを下ろす。
わずかに顔を天井へと向けて、あふれそうになる感情を押し殺し、今度はゆっくりと瞳を開ける。
うっすらと汚れた白色と見つめあい、ふっと息をこぼした。
私は彼の言葉を目で追いはじめた。