放課後コイ綴り
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いらっしゃいませ、と声を出しながら、両手いっぱいにコミックを抱えて店内を歩く。
これは朝の内に出し切ることができなかったもの。
映画化した作品で、コーナーが作られているから数冊は置いてあるとはいえそれだけじゃ少ないんだ。
コミックを積み上げながら思うのは、もちろん昨日読んだ彩先輩の新作。
『放課後コイ綴り』に載っていた解説に、章タイトルの秘密。
まさか彩先輩が彼に協力していたなんて。
態度がおかしいことに違和感を感じてはいたけど、だからってわかるはずがない。
だけど、今はもう知っている。
あの頃と同じように隠されていた言葉に気づいてしまったなら、仕事中でも関係ない。
大人としてだめなことだけど、他のことに集中なんてできない。
高校を卒業して以来、彼に関して、ずっとぼんやりとした影のようなものしか感じることはなかった。
だけど昨日は、ずっと会いたかった人の後ろ姿をはっきりと感じた。
……会いたい。
会いたいに決まっているじゃない。
職場なんてこんなに近くまで来たことを知って、彼の想いを再び手にして、それだけで満足なんてもう、……できないよ。