放課後コイ綴り
……決めた。
今日の仕事が終わったら、真っ先に彩先輩に連絡しよう。
そして一条くんの居場所を訊くんだ。
たとえなにか問題があったとしても、どうにかしてみせる。
困難なんて乗り越えて、きっと走り出してやるんだ。
そうして、わたし、あなたに会いに行く。
そう決心してしまえば、驚くほど心は晴れやかになる。
コミックを積み終えたわたしはよし、と気合いを入れるように小さくひとつ頷いた。
さらに追加のコミックを取りにレジ裏まで戻ろうとした瞬間、声をかけられる。
「すみません」
「はい。いらっしゃいませ」
くるりと声の方へ身を翻す。
仕事中はひとつに束ねた髪がふわりと踊る。
振り返ったその先、目があった人の姿に息を呑んだ。
喉仏と鎖骨が目を惹く細めの身体。
少年の名残を感じる雰囲気とは対照的な男らしい手。
きめの細かい肌にさらりと落ちる黒髪。
そして何より、まっすぐな切れ長の瞳が、絵画のように美しく瞬いた。
ああ、大人になったね。
幼さの目立っていた高校時代とは違う。
だけどその姿ひとつでわたしの胸を甘く疼かせるのは変わらない。
懐かしいその感覚に、言葉が出ない。