放課後コイ綴り








とある放課後。

入部してから1ヶ月が過ぎ、ようやく部室でいつも座る席が確定して来た、そんな頃。



「ふみー!」



わたしの名前を呼んで、うしろからぎゅうっと抱きついてきてくれる存在。

明るい性格に似合う、爽やかな柑橘系の香りをまとったこの人は、



「先輩」



2年生の日生 彩(ひなせ あや)さん。

センター分けのショートカットをしたいつも元気ではつらつとした先輩。

文芸部のムードメーカーで、色々なことに挑戦している憧れの人なんだ。



「うーん、ふみは今日も可愛いねぇ。
今度おねーさんとデートしよ、デート」



頬ずりしてくる彩先輩の髪がわたしの頬を柔らかくなぶる。

く、くすぐったいっ。



わたしは美少女でも美人でもなくて、彩先輩の言葉の意味はきっと動物に対するような愛玩と変わらない。

だけど、こうやって言ってくれるのは気恥ずかしいけど……嬉しいんだ。







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