たとえば呼吸するみたいに








「ヒメー!」



今と変わらない、その呼ばれ方であたしのことを呼ぶ人。



だけど、違う。

まだ幼く、舌ったらずなその声は今よりずっと甘い。



確かまだあたしと玲が6歳で、小学校に上がる前。

その頃から玲はツンケンした面を持っていたけど、それでも今よりずっと素直で可愛かった。

あたしには特に笑顔ばかり見せてくれていたし。



そんな彼のことをあたしは今とは違う呼び方をしていた。



「れーくん!」



ひらひら、ふわふわ。

女の子らしいピンクのワンピースに、一人称はヒメ。



そう、あたしは昔は乙女チックな思考を持つオンナノコだったんだ。



今となっては影も形もないけどね。

長い髪だってきちんと手入れをして、いつも可愛い格好をしていた。



あの頃のあたしは自分で言うのもなんだけど、今よりずっと名前に見合った姿をしていた。

バカなことはしていたけど、ちゃんと可愛くあろうとしてただけよかったよね。



そんなあたしでも釣り合わないくらい、その頃から玲はカッコよくてモテてたけど!






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