たとえば呼吸するみたいに




ごめーん、と軽く謝ると「これだからヒメは」と玲が重たいため息を吐き出す。

そしてそのままネクタイを緩め、シャツのボタンを外し、と着替え始めた。

……と思いきや、ぴたりと動きを止めてあたしを凝視してくる。



なになに、すっごい視線突き刺さってんだけど。

視線が痛いんだけど。

むしろもう空気が!



「……出て行こうとしないのな」

「え、なに。出てけって?
やだよ、面倒なんだもーん」



くるりと玲に背を向ける形に寝返りを打つ。

目の前には壁で、着替えなんて見えない。



ほら、これでもう覗きじゃないから大丈夫!



「スカートの中見えそうなんだよ、このバカ」



そう言って、あたしの手の中から玲のブレザーを奪うと、腰のあたりにふわりとかけてくれる。



もう1度ため息を吐いた気配を感じつつも、絶対動かん! とベッドに貼りつく勢いでいると、衣擦れの音。

肌と布が触れ合い、こすれていることがよくわかる。



シャツが落ちて、部屋着のTシャツを身に着けて。

下もいつものスウェットに履き替えたに違いない。



さっきまでの夢と違い、彼はこんなにも生々しい音を立てている。



そう。

あたしと同い年の、17の、男なんだ。






< 18 / 52 >

この作品をシェア

pagetop