たとえば呼吸するみたいに




結婚の約束を交わしてから、随分と時は流れた。

玲は、ちゃんと覚えているのかな。



だってもう、あたしたちは365日を繰り返す日々を10回以上。

あたしたちが共に過ごしてきた時間の半分以上なんだもん。



それがどれだけ愛おしく大切で、貴重なことかなんて多くの人がわかっちゃいない!



あたしたちにとって、その時間はとても長くて重たいものだから、あの約束はなかったことになってやしないかと心配になる。



だけどきっと、玲は忘れたりなんてしない。

不安になりながらも、ずっと心に留めてくれていると信じられるんだ。

それが、よりあたしを切なくさせるんけどね。



忘れて欲しい。忘れないで欲しい。

対極で、どちらか一方しか叶わないあたしの願い。

玲はどっちを叶えてくれるんだろう。



「……ねぇ、玲」

「なに」

「姫那ちゃんと付き合うの?」



空気がわずかに変わる。

びりびりと痺れてしまいそうで、怖くて。

重たくなったそれに、呼吸ひとつさえ苦しくなった。






< 19 / 52 >

この作品をシェア

pagetop