たとえば呼吸するみたいに




「お前さ、告白されたわけでもないのに付き合うだの付き合わないだの、バカだろ」



珍しく玲が一息に吐き出すように言葉を口にする。

苛立ちが乗せられたそれは、あたしに容赦なく突き刺さった。



シーツをぎゅう、と縋るように掴む。



「だって、……玲だってわかってるよね?
姫那ちゃんの気持ち、気づいてないはずないもん」



直接告げたことはなくたって、姫那ちゃんの想いは仕草から、言葉の端々から伝わってくる。

彼女の玲への好意を知らない人なんて早々いない。



そんな状態で、鈍感男じゃあるまいし、玲が気づいてないなんてありえない。

なんの悪い冗談? って感じだもん。



「それでも、俺は本人からなにも聞いていない。だから付き合うかなんて、今はわからないし、関係ない」



それは暗に気持ちは知っているという言葉で。

……あたしが、傷つくことなんて、許されないのに。






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