たとえば呼吸するみたいに




手が濡れたままということまで怒られて、なんだか拍子抜け。



もしかして、告白は今日じゃなかった?

それとも呼び出しなんて拒否した?



「なーんだぁ」

「は?」

「なんでもないよー」



安心して頬を緩ませる。

心配して損した!



「あ、ねぇ玲、今日文房具屋さん寄っていい? 赤ボールペンのインクが切れちゃってさー」



詰め替えをいつも常備してたのに、それさえ切らしちゃうなんてショックだよね。

今日また買いだめしとかないと。



「悪い、今日は一緒に帰れない」



呑気に考えて、玲が断るなんて考えてもみなかったあたしの時が止まる。

呼吸が重たくなる。



「……え?」



そっと玲の顔を覗きこむ。

いつもと変わらない表情があたしを見下ろしている。



「用事あるから、先に帰ってろ」



……そんなこと言わないで。

あたしと一緒にいないことを、選ばないで。






< 27 / 52 >

この作品をシェア

pagetop