たとえば呼吸するみたいに
手が濡れたままということまで怒られて、なんだか拍子抜け。
もしかして、告白は今日じゃなかった?
それとも呼び出しなんて拒否した?
「なーんだぁ」
「は?」
「なんでもないよー」
安心して頬を緩ませる。
心配して損した!
「あ、ねぇ玲、今日文房具屋さん寄っていい? 赤ボールペンのインクが切れちゃってさー」
詰め替えをいつも常備してたのに、それさえ切らしちゃうなんてショックだよね。
今日また買いだめしとかないと。
「悪い、今日は一緒に帰れない」
呑気に考えて、玲が断るなんて考えてもみなかったあたしの時が止まる。
呼吸が重たくなる。
「……え?」
そっと玲の顔を覗きこむ。
いつもと変わらない表情があたしを見下ろしている。
「用事あるから、先に帰ってろ」
……そんなこと言わないで。
あたしと一緒にいないことを、選ばないで。