たとえば呼吸するみたいに




「あ、たし……」



震える声を堪えて、呑みこむ。

意識していつも通りのように吐き出す。



「あたし、待ってる!
用事が終わるまで教室で待ってるよ!」

「っ、」



こんなこと、今までに言ったことなんてない。

委員会の時は先に帰ってるんだから、今日だけ急にこんなことを言い出すなんて明らかに様子がおかしい。

わがままで身勝手なことだってわかってる。



それでも、今、玲と離れることが心底怖いんだ。



「だめだ。お前は帰れ」



やだ、と首を振る。

何度も、何度も横に振る。



「そんなこと、言わないで」



腕を掴んで、離れてしまわないように力をこめた。

少しの反応だって見逃さないように、顔を覗きこむ。



あたしは今言ってることもしてることもめちゃくちゃで、最低で。



もうなにをしてるのかわからない。

なにがしたいのかも、わからない。



ただ、胸が痛い。

どうしようもないくらいの焦燥感に鼓動が早くなり、体の奥がじりじりと焦げついている。






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