たとえば呼吸するみたいに








目の前は自分の部屋。

いつの間に帰って来たのかもわからないけど、気づけばあたしは部屋の明かりをつけることもなく、ベッドに腰かけていた。



玲の腕を掴んだ、あたしの右手。

確かに捕まえたのに……外された。



苛立ったかのように。

もう耐えられないとでも言うように。



それなのに、手荒くしたことに少し後悔して。



温度を失い、冷え切ったあたしの右手は指先まで痺れている。



そこに熱い、雫が落ちた。

あたしの涙がほたほたと濡らしていく。



「ふ、ぅ……っ」



悲しい。

悲しい悲しい悲しい。



そしてなにより、怖い。



彼を失うかもしれない未来がすぐそばにあるのかと思うと、全身が凍ってしまいそうになるんだ。



あたしを置いて姫那ちゃんのところに言ってしまった玲は、家に帰って来た時にどんな立場になっているのか。

知りたくないと思う。







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