たとえば呼吸するみたいに
*
目の前は自分の部屋。
いつの間に帰って来たのかもわからないけど、気づけばあたしは部屋の明かりをつけることもなく、ベッドに腰かけていた。
玲の腕を掴んだ、あたしの右手。
確かに捕まえたのに……外された。
苛立ったかのように。
もう耐えられないとでも言うように。
それなのに、手荒くしたことに少し後悔して。
温度を失い、冷え切ったあたしの右手は指先まで痺れている。
そこに熱い、雫が落ちた。
あたしの涙がほたほたと濡らしていく。
「ふ、ぅ……っ」
悲しい。
悲しい悲しい悲しい。
そしてなにより、怖い。
彼を失うかもしれない未来がすぐそばにあるのかと思うと、全身が凍ってしまいそうになるんだ。
あたしを置いて姫那ちゃんのところに言ってしまった玲は、家に帰って来た時にどんな立場になっているのか。
知りたくないと思う。