たとえば呼吸するみたいに
ガチャリ、と扉の開く音がした。
なに、お母さん?
よりによってこんな時にノックもなしに入ってくるなんて。
せめて顔を見られないようにとうつむいて。
それでも堪えきれず、肩を揺らして声を漏らす。
明らかに泣いているとばれているだろうとは思いつつも、声をかけられることがなければあたしから話しかけることもできない。
そうしていると、扉のところで立ち止まっていた気配が部屋の中に入って来た。
「────この部屋に来るのも久しぶりだな」
この声は。
低くて淡々とした、それでいて優しい、この声の持ち主は……っ。
顔を上げると、そこには、
「れ、い……」
あたしの大好きな、幼馴染。
もう長いことあたしの部屋には来てきなかった彼。
あたしが押しかけることはしょっちゅうなのに、玲は来てもリビングまでしか来なかったのに。
どうして今ここにいるの。