たとえば呼吸するみたいに

彼を掴むあたしの手に、玲がその大きな手を伸ばす。

その手に外されることがないようにとあたしはより力が入ってしまう。



「痛いんだよバカ」



頭をぺしんと叩いて、玲は苦笑を零す。

それでいて、あたしの手を優しくとんとんと叩くんだ。



そのリズムに促されるようにあたしの力が抜けると、玲は手を重ねたまま目を細める。



「……俺は、宮岸とは付き合わない」



ふっと全身から力が抜ける。

そうしてようやく体に力が入っていたことに気づいて、ずんと一気に体が重くなった。



安心から瞳に溜まっていた涙が頬の上を転がった。



「じゃあ……あたしと付き合ってくれる？」



そう小さく尋ねれば、玲は瞳を閉じて首を振った。

────横に。



「お前と俺が付き合うなんて無理だよ。
それだけは、ありえない」

「なん、で……っ」

「本当はわかってるだろ？」



突き刺さるかのような鋭い視線。

あたしのことを暴く瞳が怖い。