たとえば呼吸するみたいに








幼かった、結婚の約束を交わしたあの頃。



元々可愛いものは好きだった。

身につけていたら自然と笑顔になれた。

恥ずかしそうにしながらも褒めてくれる玲の前に立つのが嬉しかった。



それでも、あたしはお姫様になりたかったわけじゃなかったんだ。



お姫様と王子様。

それを望んでいたのは他でもない玲で。

玲だけが、あたしをお姫様にしたかった。



そのことをあたしはずっと知っていた。

だけど、ずっと知っていたって、なれるはずがなかったんだよ。



可愛い白い花柄のシュシュをくれたって、玲。

あたしはお姫様になんてならない。



だって、あたしの本当の願いは、なりたかったのは。



王子様みたいな玲の隣にいられるような騎士がよかった。

兄弟がよかった。

そんな途切れることのない関係性が欲しかった。



いっそのこと、あたしが男だったらよかったのに。

そうすれば、今もこんなに苦しむことなんてなかったし、互いの部屋に気軽に行き来する幼馴染でいられたのに。






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