たとえば呼吸するみたいに




玲があたしのバカな考えに、彼に恋をすればいいという考えに気づいてるなんてわかってた。

だから玲は全てを終わらせるために、あたしに「好き」と言わせようとしていた。



玲はたくさんの想いをこめて、何度もあたしに「バカ」って言ってたんだ。



辛いのは玲の方なのに、諭そうと、間違いを正そうとしてくれていた。

あたしはそんなの嫌だから、彼にだけは直接言えずにいたけど。



だからこそ、玲の「バカ」には深い、意味がこめられていた。



慈しみが嬉しくて、恋情がこそばゆくて、呆れが腹立たしくて、ぬくもりが離しがたくて。

あたしは玲にバカと言われると、どうしようもなく揺さぶられたんだよ。



「ごめん、……ごめんね玲。
あたしのこと、好きになってくれたのに、ごめん……っ」



玲が好きだよ。

同じ〝好き〟を返したかったよ。



その気持ちはウソじゃないのに……悲しい。



止まったはずの涙はまばたきに促されるように、落ちていく。

唇を噛み締めても、どんなに自分自身に痛みを加えても、止まってくれない。



なんでよ。

あたしの体なのに、コントロールできなくて喉の奥が鳴る。



あたしが悲しんでいることで、優しい玲はまたうまく傷つくことができない。

そのことが切なくて、たまらなくて、自分で自分がいやになる。






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