たとえば呼吸するみたいに




2年目となれば電車通学にもすっかり慣れていて。

それでも背の低いあたしにはなかなか大変な電車に揺られて30分。



人混みに呑みこまれそうになると、玲があたしを庇ってくれているから毎日なんとかなっているんだよね。



本当にさりげなく。

わかりにくい優しさに助けられていて、そのことに気づくとあたしは嬉しくなるんだ。



あたしの幼馴染は素敵でしょ、って電車に乗ってる人みんなに自慢したくなるくらい。



でもまぁ、そんなことをしたらその瞬間に玲から冷めた目で見つめられちゃうからね!

17年目ともなればそれくらい簡単にわかるからね!

その衝動をなんとか堪えているんだ。



「あたしってば気の回る女だなぁ」

「……は?」

「ああ、玲は気にしなくていーの」



あたしはにこにこと笑いながら彼を見上げて、歩き慣れた通学路で玲の隣を歩く。

バカにしているかのように鼻で笑いながら、玲が前を向く。



「またなんか頭悪そうなこと言ってんのな」

「なんだとー⁈」






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