たとえば呼吸するみたいに
「玲はそれでいいの?
幼馴染のままで苦しくないの?」
「バカ」
なんでよ。
あたし真剣に言ってるのに。
口を動かす振動で、彼の髪があたしを責めるように嬲る。
「俺がどれだけお前のこと好きだと思ってんの?」
「っ!」
好き。
まともに言われたことのなかった言葉を耳元に落とされる。
どく、と心臓の音がして。
胸が痛くて切なくて、息を詰めた。
ああ、あたし、本当に玲に想われていたんだなぁ。
玲はあたしに、恋をしていたんだなぁ。
「好きだから、幼馴染でいよう。
お前のためなら俺はきっと大丈夫だ」
あたしのためなら自分の気持ちを殺せると、終わらせてみせると。
そう言えるくらい優しい人。
あたし、そんな玲が好きだった。
やっぱり愛したかったと思う。
だって玲以上の幼馴染なんて、男の子なんていないって再確認しちゃったんだもん。
それでも、無理なんだ。
痛いくらいにわかってしまったんだ。
あたしたちふたり、恋はできないね。
想いはひとつになれないね。
だってお互いにお互いのこと、大好きで大好きで仕方がないから。