たとえば呼吸するみたいに
「俺たちはきっとこれから、距離が変わる。そうして、お互いより時間を過ごす人間ができる」
「……うん」
やだな。
すごく……やだ。
そんなさみしいことってない。
ずっと隣にいたかったのに、いられないんだね。
姫那ちゃんと付き合わなくたって、あたしたちの距離が開いちゃうなら嬉しくない。
誰かのものにならないだけまし、なんてそんな風になんて考えられない。
あたしまだ、大人になれないんだもん。
「誰かを好きになって、恋人ができて、結婚して、子どもができて。
俺もお前も、いつかきっと遠くなる」
「……」
「それでも、俺たちは特別だ」
続けられた否定の言葉に思わず落ちていた視線を、ふと上げる。
玲が頭をあたしの肩から上げて、目を合わせた。
彼は眉を歪めて、瞳を潤ませて、くしゃりと歪めた表情で。
「俺たちは一生、幼馴染だ」
そして、今までにないくらい優しい表情を浮かべた。