たとえば呼吸するみたいに








いつも通りの、朝がきた。



お母さんの作ったご飯は手作りのクロワッサンに、やけにおしゃれな紅茶だった。

あたしのお母さんの女子力が高すぎてちょっと困っちゃうよ。

一見クールなのに、中身女の子だからね。



こんな洋風の朝ごはん、似合わないし食べたくないんだよ!

まぁ、おいしいから食べちゃうけどさ!



でもあたし日本人!

白米プリーズ!

日本ノ心、ドコデスカー!



「ちょっと咲姫、時間ぎりぎりだけど平気なの?」

「はっ!」



そうでした。



パン派のお母さんに負けることなんて毎日のことなんだから、諦めて学校行かないと。



制服を身に着けて、濡らした手でお団子頭を作りあげる。

悩んだ末に、いつもの白い花柄のシュシュをつけた。



あまりにも似合わなくて、可愛くて。

だけど毎日着けていたせいでこれがないと落ち着かない。



無理に変わらなくていいなら、自然に変わる日まで。

玲を繋ぎとめるために必死だった習慣も、以前とは違う意味の〝そのまま〟で。



うん。

……うん、きっと、これでいい。



「行ってきまーす!」

「はい。気をつけて」



小さく笑ったお母さんに手を振って家を飛び出した。






< 45 / 52 >

この作品をシェア

pagetop