たとえば呼吸するみたいに




玄関のポーチを飛んで降りれば、そこには、



「おはよう!」



黒髪のいつでもイケメン、あたしの大好きな玲。



「はよ」



顔を付き合わせれば、お互いの目元に思わず視線をやってしまう。



うーん、やっぱり少し涙の跡がわかる。

まぁ、昨日あれだけ泣いたんだし、仕方がないかな。

ふたりで一緒に冷やしたから、これでもましな方だとは思うんだけどね。



……あの後、あたしたちはこれといって変わった話はしなかった。

いつも通りで、……本当に、普段と違うところなんてなかった。



距離感も、会話の内容も、空気も。

そりゃ、多少気まずさはあったけど……。



すぐにあたしがタオルをあっためすぎるというバカなことをしでかしたせいで、速攻怒られました。

玲は怖い。これだよ。



それでも、いいんだ。

本当の元通りじゃないけど、いい。



あたしはお姫様じゃない。

未来永劫、なることはありえない。

それは変わらない事実。



だけど、あたしの王子様になりたいと言ってくれた人にとっての初恋のお姫様なんて、幸せだなって思うから。

気恥ずかしいけど、素直に嬉しいって思うから。






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