たとえば呼吸するみたいに
自然な流れで姫那ちゃんも一緒に通学路を歩いていて。
玲を間に挟んでいるせいで、玲の両手に花と草、みたいな図になっている。
姫那ちゃんはいい子だし、人気者。
あたしだって彼女のことを嫌いなわけじゃない。
それでも。
少し苦手だと思ってしまうのは、その愛らしさへの引け目と、
「そういえば、大庭くんって甘いものは食べられる?」
「……多少は」
「じゃあ、よかったらこれ食べて?
昨日クッキー焼いたの」
────彼女が玲に好意を向けているということ。
あたしよりずっとわかりやすいその感情。
全身で、存在全てで、玲のことが好きだと叫んでいる。
「甘さも控えめだから大庭くんでも大丈夫だと思うの。
咲姫ちゃんとふたりで食べてくれると嬉しいな」
あたしの名に背を押されたかのように、玲が手を伸ばす。
色は乗せず、だけどぴかぴかに磨かれた姫那ちゃんの綺麗な爪が彼の手と触れ合った。
頬が紅潮していき、そりゃもう幸せそうに緩ませて。
……ああ、可愛いなぁ。
「じゃ、じゃあわたし、先に行くね。
本当にありがとう」
ぱたぱたと駆けていく背中をあたしも玲も呼び止めたりしない。
髪が踊っているのを細目に見つめていた。