たとえば呼吸するみたいに




「……それ、食べるの?」

「まぁ、もらったし」

「ふーん」



そりゃそうだよね。

玲は1度受け取ったものを捨てたり、誰かに押しつけたりするようなやつじゃないもん。



今回は姫那ちゃんが名前を出したから、あたしは例外なんだろう。

それでも、本来ならあたしにだって回ってくるはずないんだ。



「なに?」

「べっつにー?
お礼くらい言ってあげたらよかったのに、って思っただけですー」



ウソ。

本当に考えたことはそんなことじゃない。

お礼を言うところなんて、正直に言うと絶対見たくなかったし。



唇があたしの意思と関係なく尖る。

玲に顔を見られないよう、足を早めて少しだけ前を歩く。



足の長さの違いで、あたしなんか簡単に追いついて、さらに追い抜くことも簡単なくせにそのまま後ろにいる玲。



「バカだなぁ……」



けなされているのは、明らかにあたしのこと。

もう! 嫌になる!



そんな声まで優しいなんて……ずるいよ。



二酸化炭素と共に吐き出された彼の言葉がどうしようもなく、あたしの心を揺さぶる。

あたしの喉が、震えていた。






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