無口なセンパイに恋した仔羊
その声に驚き、私と綾人さんは、入り口に目線を向けた。

「…琉偉」
「…」

不機嫌な顔のまま、私達の方へ歩み寄ると、ガシッと私の手を掴んだ進藤さん。

私はただただ驚いて。

「琉偉、俺が先だぞ」
「…こっちが先約、だろ?」

真顔で私を見た進藤さん。私は何度か頷いてみせた。

呆気にとられる綾人さんを置き去りにして、私の手を掴んだまま、外へ連れ出した。

「…手、痛いです」

その言葉に若干手の力は緩んだが、絶対に離されることはなかった。

…ドキ。

思わず心臓が反応した。

…だって、進藤さんの手が、指が、私の指に絡ませたから。

…気が付けば、高そうなフレンチレストランの前に着いていた。
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