無口なセンパイに恋した仔羊
進藤さんはさっさと会計を済ませると、先に出て行ってしまった。

ハッとして、慌てて後を追う。

「…進藤さん、今日は私の奢りって」
「…本気にしてたのか?」

「…は?…え?」
「ほら、帰るぞ」

…わ。また、進藤さんが私と手を繋いだ。

心臓が破裂しそうなほど、ドキドキしてる。それが、手から伝わってしまいそう。

…いつの間にか、玄関の前にいて。私は咄嗟に口にしていた。

「…やっぱり、こんなの悪いです。だから、なにか…⁈」

…何が起きてるんだろう。これは、夢?

「…進藤、さん」

無言のまま、私を抱き締めた進藤さん。その行動に驚いて固まる私。

「…何時になったら、本気の気持ち、聞けるんだ?」

「…ぇ」

「…これで、あの日の晩の事はちゃら」

「…」

私からゆっくり離れた進藤さんは、私の頭を優しく撫でると、自分の部屋に入ってしまった。

…しばらく、その場から動けなかった。

…進藤、さんが、何を考えてるのかわからない。

…私の事、どう思ってるんだろう。

消えたドアを見つめながら、そんな事を思っていた。
< 20 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop