無口なセンパイに恋した仔羊
…真夜中に目が覚めた。部屋の中は真っ暗。

デジタル時計が唯一光っていて。…進藤さん、まだ仕事してるのかな?
ちょっと気になって、起き上がろうとすると、突然後ろから抱きしめられ固まった。

…誰?!熱はだいぶ下がったみたいだが、気怠さはまだ残っていて、力が入らない。

でも、一体後ろに誰がいるのかわからなくて、怖くなる。


「…新垣、どうした?」
「…進藤さん?」

…私の問いに、抱きしめる事で返事をする進藤さん。

それに安心して、ホッとため息をついた。

「進藤さんに、風邪が移っちゃいけないから、帰ります」
「…バカ、それじゃあ、ここに置いてる意味がない」

「・・・でも」
「病人は静かに寝てろ。・・・眠い」

「・・・・ごめんなさい」
「・・・こうしてると、安心するな」

私をギュッと抱きしめると、すぐに、進藤さんの寝息が聞こえ始めた。
…疲れてるよね、毎日仕事ばかりしてる人だから。

・・・でも、この体勢、緊張して眠れそうにない。

しばらくそんな事を思ってみたが、風邪には勝てないのか、また睡魔に襲われた。

…眠ってるのを良い事に、私も、進藤さんに抱きついている事を知るのは、次の日の朝の事だった。
< 30 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop