無口なセンパイに恋した仔羊
「…悪い、ちょっと出でくる」

電話を切った途端、琉偉さんが立ち上がりそう言った。

「…どうかしたのか?」
「…向こうの担当者がミスったらしい」

「…えっ。琉偉一人で大丈夫なのか?」
「あぁ、こらくらいなら、どうにかなる」

「なんかあったら、連絡しろよ。行くから」

「あぁ、その時は頼む。…綾人」
「…ん?」

「…美鈴に、指一本触れるなよ」

琉偉さんの言葉に、私も綾人さんも、目を見開く。

そして綾人さんは、噴き出した。

「…分かったよ。指一本触れない。でも、気持ちはそうそう変わらない」

「…綾人、お前」
「る!琉偉さん、早く行かないと」

喧嘩になりそうな所で、話をそらす。琉偉さんは、渋々社外に出て行った。

「…綾人さん、琉偉さんを困らせないてください」
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