絶叫脱出ゲーム~奴隷部屋カラ今スグ逃ゲロ~①
それは、ここへ来るより前から思っていたことだった。


あたしはまっすぐに翔吾を見つめる。


義足になってからサッカーに関するすべての事を放棄してしまった翔吾。


だけど、少し夢を見る角度を変えればそれはまだ終わりじゃない事が見えてくるんだ。


「朱里……」


翔吾が驚いたように目を見開き、あたしを見た。


「あたしには、大きな夢は何もなかった。ただ、高校を卒業して、進学して就職して。そんな平凡な人生を歩んでいくんだろうなって、思ってた。でも、今は違う。


あたし、今ここで翔吾を守りたいと思ってる。これほどまで強く思ったことなんて今までに一度もない」


そう言いながら、あたしはほほ笑んだ。


好きな人に真っ直ぐ自分の気持ちを伝えられるのも、きっとこれで最後になるだろう。


「翔吾、あたしの初めて生まれた夢を叶えてくれないかな?」


「朱里……」


翔吾の表情が歪む。


その目は涙で滲み、きっとあたしが歪んで見えていることだろう。
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