オトナな部長に独占されて!?



壁掛け時計と部長デスクをチラリと見て、またすぐに手元の契約書類に視線を戻した。


人事会議で何をもめているのか気にはなるけど、どうせ私とは関わりのないこと。


私はまだ丸3年で栄繁さんの新担当になって間もないから、営業部からの移動はないだろう。


昇進もないと思う。

不思議だよね……半年前は同期の下山に先に主任になられたのが悔しくて腹立たしくて、『どうして私は出世しないの⁉︎』と怒り狂っていたのに、今は出世欲が薄れてきている。


もちろん、いつかは管理職になりたいという野望は捨てていないけど、それは今じゃない。


私はまだ未熟者。

今回の営業成績トップだって、葉月部長が陰ながらサポートしてくれなければ、きっと無理だった。


そんな私が出世欲を持つのはまだ早い。

もっと努力して、実績を積み上げて、それからじゃないとね……。




翌日。

「おはようございます」と営業部フロアに入ってすぐに、いつもと様子が違うことに気付いた。


私より先に出社していたのは20人ほどで、葉月部長の姿もあった。

部長は部長デスクに向かって仕事を始めていて、他の人達は部長デスクのすぐ横に置かれているホワイトボードの前に群がっている状態。


一瞬だけ何事かと思ったが、「ああ、昇進と部署移動が発表になったのか」と納得した。


私はホワイトボードではなく、まっすぐに自分のデスクに向かう。


今は混み合っているから、朝会の後にでも見にいこう。

私の名前はないだろうけど、営業部から誰が出て行って、他部署の誰が入ってくるのかくらいは把握しておかないとね。


< 100 / 145 >

この作品をシェア

pagetop