オトナな部長に独占されて!?
葉月部長は私の胸元の社員証を一瞥し、それから私の目をまっすぐに見た。
「第二営業部の高村円香さん。
経費節減。この紙に書かれていることを、あなたは良く読んだ方がいいみたいですね。
コピー機の使用説明書を熟読して、次からは気をつけて下さい」
葉月部長に怒っている雰囲気はみられない。
イケメンスマイルを浮かべて、いい男フェロモンをだだ漏れさせながら至近距離に立っているだけ。
私の身長は、153㎝。
30㎝ほども上にある整いまくった顔を見上げて、私は青ざめていた。
やばい……。
これは初日から、ダメなヤツ認定決定だ。
私は仕事ができる方だ。
先月だって、契約を6件も取ってきたんだから。
こうなったのは、下山の貼り紙のせい。
アレもコレもソレも、全部下山のせい。
くそぉぉっ‼︎
青ざめた直後に、下山への怒りで顔を赤くする私。
葉月部長はクスリと笑ってから、田中課長を従えて、優雅な足取りで営業部のフロアを出て行った。
馬鹿なミスをしてしまったのは私だけど、馬鹿にされるのは嫌。
葉月部長の爽やかなイケメンスマイルに、『女の子だから許してあげる』的なものを勝手に感じて、カチンときてしまった。
部長が出て行った後のドアを睨みながら、唇を噛みしめる。
やっぱり男はムカつく生き物だ。
どんなに見た目が良くても、伝説を持っていても、前支社長で新部長でも、
男である葉月部長を、認めるわけにいかないんだから‼︎