オトナな部長に独占されて!?
男なんかに負けてたまるか!
◇◇◇
葉月部長がやってきた日から、半月後のこと。
午前中に2件の顧客回りと新規開拓に足を運んでいた私は、12時半に社に戻ってきた。
お腹が空いた。
今日の日替わり定食は何かな……。
そう思いながら、1階奥にある社員食堂に入っていく。
小さな社食は、満員御礼。
麻婆豆腐定食のトレーを手に、どこか空いている席はないかとキョロキョロしていたら、
「円香ちゃーん、ここ空いてるよー」
と、ムカつく声がした。
下山……。
6人掛けのテーブルの、下山の隣が空いていた。
パッと見た限り、他に空いている席はない。
それでも下山と話すのが嫌で聞こえないふりをしていたら、奴はニコニコと近寄ってきて、私のトレーを引ったくった。
「円香ちゃんてば、聞こえないの?
なんども呼んだのに。
ほら、僕の隣が空いてるから、おいでよ」
下山は私が嫌がっていることなど、微塵も気づいていないようだ。
あからさまな溜息をついても、「外回りでお疲れなんだね」と言って、違う理由にされてしまった。