オトナな部長に独占されて!?
割り箸が折れそうなほどに私の手の中でしなっているのに、下山は全く気づかず喋り続けている。
そんな腹立たしい状況がしばらく続いた後、
「あっ! 円香ちゃんゴメン、また今度ね」
下山はそう言って、食べかけのトレーを手に急に他のテーブルに移動した。
斜め前の6人掛けのテーブル席には、今空いたばかりの席がひとつ。
そこに座った下山は、隣の席の宣伝広報部の山中課長に、ヘラヘラしながら話しかけていた。
「課長もミックスフライ定食ですか?
僕と同じで、嬉しいです。
食の好みが合うってことは、気が合うってことらしいですよ。
今度飲みに連れて行ってくれませんか?
課長の行きつけのお店とか、知りたいなぁ〜。
あ、課長! そのネクタイもしかして有名ブランドの商品ですか?
カッコイイ! 僕も来月の給料出たら奮発して買っちゃおうかな。色違いにしてもいいですか?」
下山……。
今さっき私に、営業部に戻りたいとか言ってなかった?
擦り寄っている山中課長に対しても、企画書うんたらで、冷たいとか愚痴っていたよね?
はぁぁぁ。何なんだアイツは。
あっちこっちでハエみたいに前足をこすり合わせて。
ムカつくことこの上なし。