オトナな部長に独占されて!?
普段の私ならなるべく関わりたくないので「お疲れ様です」と一言言って通り過ぎるところだが、
今はまだ下山のことでムカムカしている状態なので、足を止めて聞いてしまった。
「西園寺部長にお聞きしたいことがあるのですが、今いいでしょうか?」
西園寺部長は珈琲の空き缶に吸いさしを押し込み、ヤニで黄ばんだ歯を見せて言った。
「君は……営業の女の子だったかな?
聞きたいこと? 参ったなぁ。あいにく妻子がいるから告白は受け取れないぞ。
秘密の社内恋愛なら、考えてやらんでもないがな。ワハハッ」
こいつは……。
狸オヤジよりも下山よりも、ムカつくオッサンかもしれない。
誰があんたの愛人になりたいと言ったのか。
気持ちの悪いことを言わないで欲しいが、そんなセクハラジョークよりも、私はある言葉にカチンと来ていた。
『営業の女の子』
西園寺部長はそう言った。
女の子と呼んでいいのは学生までだと言うのが、私の考え方。
私はもう大人だ。
ひとりで地に足をつけて生活し、日々仕事に邁進しているのに、“ 女の子 ” だ?
このオヤジは私を一社員として見ていないと感じ、腹が立った。